原点
さて今回はスタッフとのやり取りの中で、ふと思い出した論語の一節があります。
「己の欲せざる所は、人に施すことなかれ」(自分がされて嫌なことは、他人にもしないようにしなさい)とてもシンプルですが、今なお色あせない、大切な人間関係の基本だと感じます。
志事をしていると、つい自分の正しさや都合を優先しがちです。
「これくらいやって当然」「自分も我慢してきた」――そんな思いが、無意識のうちに誰かを傷つけてしまうことがありますね。
けれど、少し立ち止まり、「自分がこれをされたらどう感じるだろう」と考えるだけで、相手への接し方は大きく変わるばずです。
例えば注意の仕方ひとつにしても、伝え方次第で相手を励ますこともあれば、萎縮させてしまうこともある。
逆に、ほんの一言の労いが、仲間の気持ちや行動を前向きに変えることもあります。
そしてこの姿勢は、社内の人間関係だけでなく、取引先との関係においても同じです。
無理な要求や一方的な都合の押し付けは、短期的には成立しても、長い信頼関係は築けません。
相手の立場に立ち、「自分だったらどう感じるか」を常に意識することが、誠実なビジネスの基盤になるのだと思います。(※我々は先義後利の精神を理解をしているので問題ないとおもいますが。)
真実として、人間関係の原点にある「仁」そして、それを実践する「恕」
この「己の欲せざる所は、人に施すことなかれ」という教えの根底には、孔子が最も重視した徳目である「仁」があります。
『論語』には、「仁」という言葉が58章105回も登場します。それほどまでに、孔子が「仁」を人間関係の中心に据えていたことがわかります。
仁とは、自己への思いやり、人への思いやり、そして天地自然の道理への敬意を意味します。
つまり「自分を大切にすること」から始まり、「他者への思いやり」へと広がり、やがて「自然や社会と調和する姿勢」へとつながっていく。人としてどうあるべきか、という根本を指し示しているのです。
そして孔子は、「仁の実践は"恕"である」とも語っています。
「恕とは、己の欲せざる所は人に施すことなかれ、これ恕なり」(※論語・衛霊公)
恕とは、思いやりと許しの心です。
相手の立場に立って物事を考え、自分がされて嫌なことは人にしない。まさに、「仁」を具体的な行動として実現する姿勢が「恕」なのです。
だからこそ私は、仲間にも、取引先にも、家族にも、そして自分自身にも、「されて嬉しいことを、まず自分から」「されて嫌なことは、相手にもしない」という"恕"の心を大切にしながら、日々の関わりを積み重ねていきたいと考えています。
それがやがて、信頼という目に見えない資産を築き、私たちの組織やビジネスの根幹を支えていくと信じています。
この内容は自戒として。。。