04未来を担う家族たちへ
このインタビューをとおして、いろいろな人とあらためて、しっかりつながり直したい。社内でも、若い人たちや社歴の浅い人たちに、もっと自分のことを知ってもらいたいとのことですが……。
いきなり社長として出会ってしまうとそれだけで、どうしたって隔たりができてしまうものです。特に、20代の若い人たちにしてみたら、僕はもう父親世代。若い人材は未来そのもの、いろいろざっくばらんに話をしたいけれど、伝わりにくいこともたくさんあるだろうから……。だからまずは間接的に、僕の思うことだったり情報を伝えられたらと思います。僕はブログもやっているけれど、それだと知らず知らず、かっこつけちゃうかもしれないし(笑)。今は、一年後すら読みにくい時代。これからはアライアンスというか、チームみんなで伸びていくべきだと思っているので、もっと僕のことを知ってもらって、互いに歩み寄りながら、手を携えてやっていきたいんです。
佐野さんから見ると、今後を担う若い人たちはどんな印象ですか?
とても賢いですよ。情報をキャッチするスキルも高いですし、それを整理・編集することも得意。何をするにも本しかなかった時代とは違いますから、その情報量や編集能力はすごいなと思っています。ただそれらを自分の中に取り込んだあと、しっかりアウトプットできているかというと、そこらへんは難しい。何というか……振る舞いがスマートすぎる気がしているんです。
賢くスマート……これって、悪いことではないと思いますが!?
たとえば100人規模のセミナーに参加したとして……そういう状況で講師に、堂々質問できる人はどれくらいいるでしょうか? わからないことがあっても聞きたいことがあってもたいていの人が、的外れなことを言ってしまったら恥ずかしい、正しいことが言えなかったら申し訳ないなどと遠慮してしまう。そのようなかっこつけを、とてももったいないと思っているんです。僕はこういう時、間違ってもいい、おかしなことを言って笑われようとも正してもらったほうが得だと、バンバン質問するよう心がけています。だって、なりふり構わずアクションしないと学びもないし、成長もできませんから。
まさに、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥ですね。
そう。あとね、ムダなことに時間や労力を使いたくないとか、何でもかんでもコスパのひと言で物事を片づけて、さっさと見切りをつけてしまうことも気になるところです。物事をさらりとそつなくこなしたいのかもしれないけれど、目の前のことがムダかどうかなんて、実際にやってみなくちゃわからない、まさに結果論。その結果だって、すぐに出るものもあれば数年後ということだってあるんだから、「コスパが悪いのでやめておきます!」なんて、そう簡単に言えるはずもありませんから。何をやるにもある程度の時間が必要だし、忍耐が大事! それに、四の五の言ってないでやってみれば、どんなことにも何かしら、手ごたえや収穫はあるもの。回り道もいとわず、目の前のことに一生懸命取り組む泥臭さこそが、僕は大事だと思っているんです。
デキる自分でありたいし、人にもそう思われたい……周囲に認められたいからこそ、かっこつけてしまうのかもしれません。
かつての自分もそうでした(笑)。でも身の丈以上の自分になろうとすると、早く結果を出さなくちゃと損得や勝ち負けでしか物事を考えられなくなってしまうし、どうしたって、その場しのぎの言動や小手先のテクニックがふえていってしまう……。するとどんどん信用がなくなっていき、最後は協力者もいなくなり、完全に追い詰められちゃうんです。だから、人に認められたいならなおさら、かっこつけるのをやめたほうがいい。もっと頑張りたい、もっともっと成長したいと、上を目指すのは大事なことだけれど、自分とかけ離れた自分を理想としては、ダメ。これからは脱スマート、等身大の自分で頑張っていくこと。失敗や間違いはダメなことでも恥ずかしいことでもないんだから、それらを自分に許してあげてほしいし、もっと長い目で、自身の成長をとらえてほしいのです。
とはいえ、等身大って難しい……どうやったら、そのままの自分でいられますか?
もしかしてこんなふうに見られているんじゃないか、あんなふうに思われてしまったらどうしようと、他人の視点で自分を見ないことです。あとは、長所伸展! 多くの人が気にするのは短所のほうだけれど、それを何とかして改善するより、自分ができることや得意なことに力を入れたほうが、楽しくポジティブだから。もしも自分の長所がわからないようなら、いいと思う行動を重ねて、自分に自信をつければよし。たとえば、10分早く出勤してゴミ拾いをするとか、誰にでも笑顔で元気よくあいさつをするとか、些細なことでも積み重ねていけば、それがいつのまにか習慣化して、「自分にもできることがあるんだ」と、マインドも前向きに変わっていく。そうすれば、私は私でいいと、ありのままの自分を大事にできるようになるはずです。
かつては人の話を聞くことができなかったという佐野さんも、今ではすっかり、説教側の人に(笑)。さまざま経験を重ねて……いいことおっしゃいます!
自分が失敗によって多くのことを学んだから、これからを担う若い人たちにはぜひ、臆せず何にでも挑戦してもらいたい。でも、かわいい後輩であり大事な家族ですから、大ケガだけはしてほしくなくて……。そんなわけで、これも言っておきたい、あれもアドバイスしておかなくちゃって、ついつい口うるさくなってしまうんでしょうね(笑)。かつて僕に、あれこれ言ってくれた先輩方の気持ち、この年・この立場になってしみじみ実感しています。あの頃は厳しさしか感じ取れなかったけれど、説教とは、愛そのもの。キツい言葉もやさしさだったんだって、今なら痛いほどわかります。僕の言葉もいつか心に響くと信じて……疎まれても無視されても、必要だと思うことを言い続けていきますよ。だってそれは、諸先輩方への恩返しであり、若い人に対する役割ですから。