05これからも僕は我が道を行く!
さまざまお話を聞いてきて思ったことは……佐野さんは本当に、前向きでしぶとい(笑)! この強靭なメンタルは、天性のものですか?
幼少期を過ごしたアメリカでの経験が大きいかもしれませんね。言葉の壁があり、知り合いなんか誰もいない、まさに孤独の中で子育てしていた母親からは、自分で考え行動しなさい、気づいてもらえるのを待つのではなく、自分からどんどん働きかけなさいって繰り返し言われていました。よそ者としての差別もありましたから、相手にきちんとわかってもらえるようアピールしなきゃいけない、でも自分は自分、人は人だから、おもねる必要はないんだよ、とも。つまり、主体は常に自分自身! そういう教育があったから、人から何を言われても気にならないし、周囲がどう動こうともブレることがないのでしょう。僕の心に常にあるのは、「自分は今、どう生きたいか?」という問いなのです。
自分は自分、人は人ってわかってはいるけれど、それはとても難しいことです。
世の中には、「〇〇しなければいけない」「××であってはいけない」などという、人を押さえつけるような暗黙のルールがゴロゴロあって、出る杭はすぐさま打たれるのが常。だからできるだけ目立たないように、周囲の顔色をうかがって行動する人が多いのかもしれないけれど……でもそんなことをしていたら、やりたいことはおろか、やるべきことすら満足にできなくなってしまいませんか? そもそも商売における僕の正義は、雇用を創出したりきちんと納税したり、地域に貢献し必要とされること。そのためには堂々と事業を行う必要があり、その結果目立ってしまうのは、しかたのないこと。周囲に遠慮して思いきった行動を控え、そのため赤字になったり納税できなくなったら本末転倒なので、むしろ出る杭でありたいと思っています。
佐野さんは強いですね。怖いものはないんですか?
虫とジェットコースターです(笑)。あとは……アクションしないでひたすらおとなしくしていることでしょうか。普通は、挑戦することに怖さを感じるのかもしれないけれど、僕にとっては、じっとしているほうがよっぽどリスキー。だって何もしないでいたら、現状維持すらまともにできませんから。「今動いて、何かあったらどうするんだ!?」などと不安や心配が先立つ人も多いけれど、もしも一歩踏み出して、何か大変なことが起こってしまったら……この先どうしたらいいかをとことん考え、一生懸命リカバリーに励めばいいだけのこと。しっかり対処すれば問題ないので、僕には、何もしないという選択肢はありません。
新型コロナウイルスの蔓延で、いろいろなことが縮小傾向にありましたが……こうした有事の際も、静かに様子を見るということはないのですか?
はい、すみません(笑)。こんな経験、しようと思ってできるものではありませんから、かえってチャンスなんじゃないかって思っています。まさに、時代が変わる転換期。このような大きな節目を経験できることに、ワクワク感すらあるんです。先のまったく見えない混沌とした中で、自分は何を考え、どう動いていったらいいのか……。僕を信じてくれている家族とともに一生懸命悩み、試行錯誤することがまた、重要な学びになるんだろうなと思っています。僕は苦労とか修練とか、つらさがあってこその幸福だと思っているんです。それがあるから、喜びを実感できる。コロナ絡みのしんどい状況すらも、しあわせのきっかけ。豊かなる経験の日々として前向きに受け止め、どんどん行動していきたいと思っています。
でも、家族の皆さんには少なからず、不安や心配があるのではないでしょうか?
たとえば、お客様のまったく入っていないガランとした店内を見回した時、危機的状況だと悲観する者もいれば、チャンスととらえて改革に乗り出す者もいる。このように同じ光景を目の前にしても、その見え方やそこから感じ取れるメッセージは人それぞれ。先入観の有無やこれまでの経験値、今いるポジションによってまったく違ってくるわけで、その差によって、不安や心配の度合いも変わってくるでしょう。僕は経営者ですから、この立場ならではの開けた視界があり、しかも、数々の失敗によって獲得してきた嗅覚もある。多くの人が「危険だらけで先には進めそうにない」「行き止まりに違いない」などと引き返そうとしても、僕の立ち位置からだったら、リスクの向こう側にあるチャンスや新たな道が見えていたりもするんです。だから僕は、前へ前へと進んでいける。時に楽天的に見えたり、大胆に思えたり……僕の行動にびっくりすることがあるかもしれないけれど、リーダーとしてはぬかりなくやっているつもり。常に光を求めて舵取りしていますから、どうか安心してください。
これからもいろいろなことがあると思いますが……。
一週間たてばよくなるはず、一カ月後なら元どおり、せめて半年先なら何とかなっているだろうと、コロナ騒動が始まってからずっと、人々は望みをつないできました。でも、今もってなおなす術はなく、明日のことすら誰にもわかりません。コロナ以前だったら、今日と同じ明日が、明日と同じ明後日が永遠に続くことも素直に信じることができたけれど、今はまったく読めない。ただそういう状況を、悪くないなと思っています。だって、どうなるかわからないから今この時を大事にできるわけだし、どうなるかわからないから今ここに全力を傾けることができる。仕事をすることも、人と会って話すことも、家族と一緒にごはんを食べることも……全部が全部、有り難きこと。そういう感謝&感動モードに入れたなら、ある意味一番ラクじゃありませんか? だって、すべてが喜びであり、何もかもが尊い日々。瞬間瞬間を大切にでき、疑問も迷いもなく生きられるわけですから。
やっぱり佐野さんは、いい意味で普通じゃない、規格外の人(笑)。これからも、何かしでかしそうな予感がします!
おめでたいって言われちゃうかもしれないけれど……また佐野君が何かやってくれるんじゃないか、地域のために頑張ってくれるんじゃないかって、僕は勝手に、周囲から期待されていると思い込んでいるんです(笑)。これを天命として、これからも人のために頑張っていきたい。間違いも失敗も、勘違いだってどんどん進化の糧にして、家族とともに成長していきたいと思っています。こんな僕ではありますが、少しでもご理解いただけると幸いです。これからもお力添え、よろしくお願いいたします。
2020年8月1日
株式会社CLUB MAISON
代表取締役 佐野 圭太